2020年3月1日日曜日

被載高帽

2015年にヒューゴー賞を受賞した劉慈欣のSF長篇小説「三体」は、文化大革命の時代から書き起こされている。この小説の主人公の一人である天体物理学者、葉文潔の妹、葉文雪が紅衛兵として武力闘争で命を落とすシーン。続いて文潔の父である理論物理学者、葉哲泰が紅衛兵の迫害を受けて命を落とすシーン。あろうことか、文潔の母の紹琳は夫哲泰を糾弾する側に回り、生き延びる。半世紀前の中国が紛れもなく味わった重苦しく絶望的な経験、その記憶が葉文潔の世界観を変えたことで、途方もないスケールの物語が始まる。

紅衛兵は毛沢東の権威を後ろ盾にして何百万人の知識人を「反革命分子」と呼んで吊し上げたが、この際に首にプラカードをかけ、頭には背の高い三角帽子を被せて、辱めている。



この三角帽子は中国ではあまり他に類のない様式で、その由来についてよくわからなかった。道教というよりむしろ民間信仰の対象で地獄の獄卒、謝将軍(七爺、白無常鬼)の被る「一見大吉」と書かれた帽子と少し似ているくらいである。しかしながら紅衛兵は道教の寺廟を悉く破壊した輩で、道教の神に倣った帽子を被せたとはとても思えない。

謝将軍
謝将軍は、范将軍(八爺、黒無常鬼)と一対になっている。

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