春節前後、中国人ツーリストは恐らく世界中にコロナウイルスをばら撒いたに違いない。彼らが帰国した後、人気の旅行先だった観光地では、どこも感染者が増えて災難に見舞われている。香港、澳門、シンガポール、日本、イタリア、イラン... さらにフランスやドイツまでも。
イタリアとイランの両国は、チャイナ・マネー狙いで中国の「一帯一路」政策に協力的だったのが裏目に出たのだろう。中国にとっても両国は地政学的に重要な位置づけで、民間レベルの交流も増えていたため、当然、訪問観光客も多かったろう。イタリアでは、感染拡大のせいでベネチアのカーニバルまで打ち切りになってしまった。
ここに来てのイタリアでの爆発的な感染拡大は、アイスランドのリキテンスタインと呼ばれる Erró の描いた「
Mao's Last Visit to Venice」のシリーズを連想させる。Erró は健在で、昨年から今年の頭にかけて、レイキャビックの美術館では「Erró: Mao’s World Tour」の名の個展が開催された。毛沢東は実際には生涯に二度、シベリア鉄道に乗ってソビエト連邦の首都モスクワを訪れただけだったが、作品ではモスクワの他に、ベネチアを初め、ニューヨーク、パリなどをプロレタリアートを引き連れて訪れ、各所で共産革命を指導している。
文化大革命から半世紀を経た2020年、今や中産階級となった中国人民が海外旅行をすることで、革命精神ならぬ武漢ウイルスを広めて資本主義経済に打撃を与えることになろうとは、今も毛主席紀年堂に保存されている毛沢東ですら予想はできなかっただろう。
The bell tower 鐘楼 The workers 工人
La Giudecca 圭迪卡島