雑誌「SKIN TWO」所載
菊地成孔「街中が彼女だらけになってしまった日に、彼女はいない」
イスラム教徒の女性がヒジャーブと云うヴェールで、目以外をすべて隠す習慣に、少年期から性的な興奮を抱いていた筆者は、彼女の、モダンアートと言うに全く躊躇がない、驚異的な技術力とコンセプトに圧倒され、たちまちファンになった。鼻と口さえ隠せば、誰にだってなれる。夢でデートもした。ヴェールを付けたままのセックスも夢想した。勿論、全裸で互いの性器を結合させている最中も、ヴェールは絶対に取らない。筆者は、驚異的なスキルを持った女性に良性の転移を起こし(=恋をし)、互いに激しく傷つけあう事への恐怖がある。神経症の症状であろう。そして恐怖が大いなる官能であることはどなたでもご存知であってほしい。筆者は自らの顔を持たぬ彼女を愛していた。
https://hillslife.jp/culture/2020/03/03/city-of-amorphous-34/
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